宋時代 掛軸(200×104.5cm) 絹本・浅設色 李迪は十二世紀、河南河陽の人。
孝宗、光宗の時代(一一六三〜一一九四)に画院画家として目ざましく活躍。
花鳥、竹石の画を多く遺し、とりわけ花鳥、人物の精緻な描写に示される清新な気風には得難いもとがあります。
この図では夕立の強い雨足をついて二頭の水牛にまたがって帰途につく牧童たちが、ひとりは蓑笠を抑え、他方は吹き飛ばされた蓑笠を唖然と眺める様子を、その右側には柳の古木の枝葉が吹きつのる風に煽られて揺られ動くさまをまざまざと描写。
後景では、蘆の汀に朦朧とたちこめる霧がやがて空の暗雲とまじりあい、雨に湿った風の力をはらんだ気配が感じられます。
見る者の心を一刻画中の息吹きに触れさせるいきいきとした作品です。
細密にしてのびやかな筆致、構図の妙、淡墨の色彩の冴えは李迪画の中でも特筆すべき位置を占めてます。