宋時代 軸装(212×109cm) 絹本・浅設色 郭熙は、河南温県の人。
北方山水画の始祖李成を師とし、李成が旧来の三遠法によって自然の無限の境地を表現しようとしたのに対して、郭熙はさらに大気表現や明暗にまで及ぶ空間表現を重視し、より理想化された境地を完成させた画人として高名を得ました。
山水画論「林泉高致」を著わして画の遠近浅深、四季朝夕の変化を論じていますが、この作もみずから早春図と題するように軽重濃淡を巧みに使い分け、早春の山林の景象を描いています。
淡い墨で描く樹々の梢、濃い墨を重ねて描く樹々の根幹の描写は、後世の画人の簡素な表現とは大きな違いがあり、山や岩の輪郭の重厚な筆使い、樹々の芽吹くさま、頂に立ちのぼる雲霞の精妙な筆致に郭熙の並々ならぬ卓越した技量がうかがえます。
早春図は伝世する郭熙画の中でも、范寛の谿山行旅図と双璧をなす北宋画屈指の名作です。